土管や石の隙間に頭だけ出してこちらをじっと見つめる——マドジョウのそのとぼけた表情に、思わず笑みがこぼれた経験のある人は少なくないはずです。「ドジョウ」と聞いて最初に頭に浮かぶ姿がそのままマドジョウで、金魚すくいや縁日で馴染み深い川魚です。水槽の底をモゾモゾと動き回り、他の魚が食べ残した餌まで片付けてくれる、頼もしいタンクメイトでもあります。
マドジョウはコイ目ドジョウ科ドジョウ属に分類される淡水魚で、日本・中国・台湾・朝鮮半島が原産地です。日本産の個体は日本の固有亜種に位置づけられています。近年は外来種カラドジョウとの交雑などの影響もあり、環境省レッドリストでは準絶滅危惧(NT)に指定されています。
マドジョウとは

マドジョウの体型は細長くニョロニョロとした形で、口の周りに10本のヒゲを持っています。体色はオリーブ色を基調に茶褐色の斑模様が入っており、模様の細かさや色の明暗には個体差が大きいのが特徴です。うろこがなく全身を覆うヌルヌルとした粘膜は、ドジョウすくいに使われる種として広く知られる理由でもあります。
底砂に潜る習性があり、砂に半分埋まった状態で静止している姿がよく見られます。また腸の毛細血管を使って空気中の酸素を吸収する「腸呼吸」ができるため、水面に上がって空気を吸う独特の行動を見せることもあります。この腸呼吸能力のおかげで、溶存酸素が少ない水田や用水路でも生き延びることができ、日本各地の身近な水辺に広く生息してきた強さの秘密です。
体の側面に10〜20個の黒い円形・楕円形の斑点が横一列に並ぶ——シマドジョウの名前はそのままこの縞模様に由来しています。砂の中にもぐったり、底面をちょこちょこと動き回ったりする愛らしい姿が人気で、川魚初心者から上級者まで幅広い層に親しま[…]
マドジョウの飼い方
丈夫で水質への適応力が高く、日本の川魚の中でも特に飼いやすい部類に入ります。まず基本スペックを確認しましょう。
| 項目 | 目安・詳細 |
|---|---|
| 最大体長 | 約10〜15cm |
| 寿命 | 約3〜5年(飼育環境により変化) |
| 水温 | 5〜25℃(最適:15〜20℃) |
| pH | 6.5〜8.0(弱酸性〜弱アルカリ性) |
| 推奨水槽 | 45〜60cm(フタ必須) |
| 底砂 | 細かい砂・田砂(潜れる深さ3〜5cm以上) |
| ヒーター | 基本不要(室内の自然水温で越冬可) |
| 難易度 | ★☆☆☆☆(日本の川魚の中でも特に飼いやすい) |
水質は弱酸性〜弱アルカリ性(pH 6.5〜8.0)と幅広く対応でき、水質変化への耐性も高いです。日本の自然水温で越冬できるためヒーターは基本不要ですが、夏の高水温(28℃超)には注意が必要です。底砂は細かい砂や田砂を3〜5cm以上敷くと潜る習性を発揮でき、ストレス軽減につながります。大磯砂など角張った底砂はヒゲや体表を傷つける可能性があるため避けましょう。餌は沈下性の人工飼料・赤虫・ミミズなど何でもよく食べます。
「フィルターって、どれを選べばいいの?」——アクアリウムを始めようとすると、必ずこの壁にぶつかります。外部式・上部式・投げ込み式・底面式・スポンジ式……種類が多すぎて、どれが自分に合っているのかわからない。「とりあえず安いやつを買ったら[…]
混泳させる際のポイント

マドジョウは温和な性格で、金魚・メダカ・タナゴ類などの定番の混泳相手とも問題なく同居できます。底層を活発に動き回り他の魚の食べ残しも処理してくれるため、掃除役としても重宝されます。ただし、体が小さい稚魚や弱った個体を「餌」と認識して追いかけてしまうことがあるため注意が必要です。また成長すると15cm程度になるため、極端に小さな魚との同居は長期的には避けたほうが安心です。
混泳に向いている種
- 金魚(中型以上) ─ サイズが合えば問題なく同居できる定番の組み合わせ
- タナゴ類(ヤリタナゴ・カネヒラなど) ─ 中層〜上層を泳ぐため自然に棲み分けができる
- シマドジョウ・スジシマドジョウ ─ 同じ底層魚だが温和で争いになりにくい
- ウグイ・アブラハヤ ─ サイズが近ければ混泳しやすい
要注意の種
- メダカ・稚魚 ─ 口に入るサイズの個体はマドジョウが追いかけてしまう場合がある
- ヒドジョウ ─ 同種に近い種で底砂の占有をめぐって争うことがある
混泳を避けたほうがいい種
- ナマズなど大型肉食魚 ─ マドジョウが捕食される危険がある
- オヤニラミ・ヨシノボリ ─ 縄張り意識が強く、底層の静止しているマドジョウが攻撃されやすい
水槽の底をニョロニョロと這い回る、鮮やかなオレンジ色の小さな体——ヒドジョウは見た瞬間に「これは何の魚?」と思わず目が止まってしまう不思議な魅力を持っています。ドジョウといえば地味な茶色というイメージがありますが、ヒドジョウはその常識を[…]
産卵についてのポイント
産卵のタイミングと婚姻色
マドジョウは自然界では春〜初夏(4〜6月)に産卵します。水温が15〜20℃前後になる時期が産卵の目安です。繁殖期になるとオスは胸ビレの付け根付近の骨格(骨質板)が発達し、触れるとざらつきを感じる「追い星」が現れます。これが産卵シーズン到来のサインです。メスは腹部がふっくらと膨らみ、卵を持った状態になります。
産卵〜稚魚育成の流れ
一般的な飼育環境での繁殖は容易ではありませんが、適切な環境を整えることで産卵を促せる可能性があります。産卵させる場合は、水草を豊富に配置した別水槽を用意し、水温変化を自然に近い形で与えることが基本です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 産卵準備 | 冬の低水温(5〜10℃)を経験させた後、春に15℃以上へ緩やかに上昇させると産卵行動が誘発されやすい。水草(マツモ・アナカリスなど)を産卵床として豊富に配置する |
| 2. 産卵 | オスがメスに絡みつくように産卵を促す(抱接行動)。水草や底砂付近に卵を産み付ける。産卵後は親魚を別水槽へ移して卵を食べられないようにする |
| 3. 孵化 | 水温20℃前後で産卵から2〜3日で孵化する。孵化直後の稚魚は底に沈んで動かないことが多いが正常な行動 |
| 4. 稚魚育成 | 孵化後3〜5日でヨークサック(卵黄)を消費し餌を食べ始める。最初はインフゾリアや稚魚用フード(パウダー状)を与える。1cm程度になれば冷凍ミジンコや細かく砕いた人工飼料に切り替える |
グリーンウォーターは、青水と呼ばれることもある水が緑色になる現象です。金魚を含めた観賞魚を飼育していると、どの水槽でも起こりうる現象です。今回は、グリーンウォーターのメリットと対処法について説明していきます。グリーンウォータ[…]
マドジョウを飼う際の注意点

① フタを必ず設置する
マドジョウは驚いたときや夜間に飛び出し事故を起こしやすいです。わずかな隙間からでも脱走するため、フタは必ず設置してください。通気性を確保できるネット素材のフタが腸呼吸の妨げにもならず最適です。
② 角張った底砂を避ける
マドジョウは底砂に潜る習性があります。大磯砂や砂利など粒が粗く角張った素材は、潜る際に体表や口のヒゲを傷つける原因になります。細かい川砂・田砂・ボトムサンドなど粒が細かく滑らかな底砂を選んでください。
③ 夏の高水温に注意する
25℃を超えると活性が落ち始め、28℃以上では危険な状態になります。夏場は冷却ファンや部屋のエアコン管理で水温を抑えてください。高水温時は腸呼吸(水面への浮上)が増加しますが、飛び出しリスクも高まるため特にフタの確認を怠らないようにしましょう。
④ 野外放流・安易な捨て飼いをしない
マドジョウは準絶滅危惧(NT)に指定されています。一見よかれと思っての放流であっても、飼育個体(特に外来系統との交雑個体)を自然環境に放すことは在来の野生個体群を脅かす可能性があります。飼育を続けられなくなった場合は引き取り先を探すか、専門店に相談してください。
⑤ 稚魚・弱った個体との混泳に注意する
温和な性格のマドジョウですが、口に入るサイズの稚魚や弱って底に沈んでいる個体を食べてしまうことがあります。繁殖水槽や病魚には同居させないようにしましょう。
かかりやすい病気と対策・予防
マドジョウは丈夫な魚ですが、鱗がなく体表の粘膜だけで保護されているため、水質悪化や傷から感染症にかかりやすい側面もあります。代表的な病気を押さえておきましょう。
白点病
体表や鰭に白い小さな点が現れ、岩や底砂に体をこすりつける仕草が見られます。水温の急変・導入時のストレスで発症しやすくなります。
- 治療:水温を25〜27℃にゆっくり上げながら、市販の白点病治療薬(アグテンやグリーンFクリアーなど)で薬浴する。鱗のない魚は薬に敏感なため規定量の半量から始める
- 予防:新しい魚を導入する際は別水槽で1〜2週間トリートメントを行い、水温変化を緩やかにする
尾ぐされ病
尾びれや鰭の端が白く溶け始め、進行するとボロボロになります。カラムナリス菌の感染が原因で、水質悪化や傷口から侵入します。
- 治療:塩浴(0.3〜0.5%程度)+グリーンFゴールドなどの抗菌薬で薬浴する。鱗なし魚は塩浴が体表を保護する効果も期待できる
- 予防:定期的な水換えと角張った底砂・レイアウト素材による傷を作らないこと
水カビ病
体表に白い綿のようなものが付着します。鱗がないマドジョウは傷から水カビが発生しやすく、底砂に潜る際の擦り傷が原因になることがあります。
- 治療:グリーンFやメチレンブルーによる薬浴
- 予防:細かい底砂を使用して体表を傷つけないようにする。水温を安定させる
松かさ病(エロモナス感染症)
鱗が逆立ち体が松かさのように見えます。マドジョウは鱗がないため体表の膨れや出血斑として現れることがあります。治癒が難しいため早期発見が重要です。
- 治療:グリーンFゴールドやパラザンDによる薬浴
- 予防:バランスのよい餌やり・定期水換えで免疫力を維持する。過密飼育を避ける
病気を防ぐ基本ケア
- 週1回・1/3程度の定期水換えで水質悪化を防ぐ
- 新規導入時は必ず別水槽で1〜2週間トリートメントを行う
- 細かい底砂を使用し、体表・ヒゲの傷を防ぐ
推奨飼育セットの提案
マドジョウを快適に飼育するためのおすすめ器具セットを紹介します。潜る習性と飛び出しリスクへの対策を重視した構成です。
| カテゴリ | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 水槽 | 45〜60cm(ネットフタ必須) | 飛び出し防止と腸呼吸のための通気を両立するネットフタが最適 |
| フィルター | 外掛け or 上部フィルター | 底面の砂ごと吸い込むリスクが少なく、水流を弱めに設定できる |
| 底砂 | 田砂・川砂・ボトムサンド(3〜5cm以上) | 潜る習性を活かせる細かく滑らかな砂が必須。体表・ヒゲの傷防止に |
| エアポンプ | 静音タイプのエアポンプ | 溶存酸素を補い腸呼吸への依存を軽減。夏の高水温時の酸欠防止にも |
| エサ | 沈下性川魚用フード・冷凍赤虫 | 底層で採食するため沈下性の餌が適切。赤虫は嗜好性が高くコンディション維持に効果的 |
| 水草 | アナカリス・マツモ | 丈夫で管理が簡単。産卵床としても機能し水質浄化効果も期待できる |
| 隠れ家 | 土管・流木・石組みシェルター | マドジョウが好む暗い潜り場所を作ることでストレスを軽減できる |
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よくある質問(FAQ)
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まとめ
マドジョウは10本のヒゲと独特の腸呼吸能力を持つ、日本を代表するドジョウです。準絶滅危惧に指定されていますが、ペットとして流通している個体は養殖品がほとんどで、丈夫さと飼いやすさは川魚の中でもトップクラスです。
飼育のポイントは細かい砂の底砂・飛び出し防止のフタ・夏の高水温対策・温和な混泳相手の選択の4点です。鱗がないため薬浴時は規定量の半量から始めることを忘れずに。定期的な水換えで水質を維持し、病気の早期発見に努めてください。
金魚や川魚との混泳パートナーとして水槽の底を活気づけてくれるマドジョウを、長く大切に飼育することが日本の固有種を守ることにもつながります。
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